大判例

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大阪地方裁判所 平成9年(わ)4610号

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官中井隆司出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大阪市阿倍野区昭和町五丁目九番一号所在の光信第二ビル四階において、「ビ・エムファイナンス」の名称で消費者金融業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、平成六年分の実際の総所得金額が一億一五二六万四四七九円(別紙一修正損益計算書参照)で、これに対する所得税額が五一〇五万八五〇〇円(別紙二税額計算書参照)であるにもかかわらず、総所得金額が一七三七万五〇〇〇円(別紙一修正損益計算書参照)で、これに対する所得税額が三六五万二八〇〇円(別紙二税額計算書参照)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を作成し、その所得の一部を秘匿した上、平成七年三月一〇日、同市西成区千本中一丁目三番四号所在の所轄西成税務署において、同署署長に対し、右所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、平成六年分の所得税四七四〇万五七〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

(各項目末尾の数字は、証拠等関係カード記載の検察官請求番号を示す。)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する平成九年一〇月二三日付け、同月二四日付け及び同月二七日付け(三六丁のもの)各供述調書(28ないし30)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一九通(9ないし27)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(2)

一  西成税務署長大蔵事務官作成の証明書(3)

一  大蔵事務官作成の「所轄税務署の所在地について」と題する書面(4)

(法令の適用)

被告人の判示所為は、平成一〇年法律第二四号附則二〇条により同法による改正前の所得税法二三八条に該当するので、所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し、罰金刑については、情状により同条二項を適用して右の罰金額はその免れた所得税の額に相当する金額以下とし、その所定刑期及び右金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、平成七年法律第九一号附則二条一項により同法による改正前の刑法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、一期分、約四七四〇万円の所得税ほ脱の事案であるが、その動機上酌量すべき事由は見当たらず、また、被告人は、平成六年に税務調査を受け、自らの態度を改める具体的な機会があったにもかかわらず、実所得額を偽って修正申告した上、右修正申告額より少し多めの金額に端数をつけておけば怪しまれないだろうという安易かつ大胆な考えのもとに本件脱税を行ったもので、経緯においても犯情悪質である。そして、ほ脱額は右のとおり多額であるほか、ほ脱率も約九三パーセントと高率である。さらに、被告人は、前記「ビ・エムファイナンス」の開業当初から脱税を行っていたもので、常習性も認められる。

したがって、被告人の刑事責任を軽視することはできない。

他方、本件所得の形成過程に違法性がないこと、被告人が自己の行為を深く反省し、本件を契機に金融業から身を引くとともに、修正申告に基づいて、本税のほか重加算税及び延滞税についても既にその全額を納付していること、被告人の前科が相当以前の罰金前科のみにとどまっていることなど、さらに、被告人の年齢、健康状態、家庭状況など、被告人のために汲むべき事情も指摘できる。

これらの諸情状を総合し、かつ、被告人の現在における経済的状況をも斟酌すると、被告人に対しては、主文掲記の刑期及び罰金額を定めた上、懲役刑についてはその執行を猶予するのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 植野聡)

(別紙一)

修正損益計算書

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

<省略>

(別紙二)

税額計算書

<省略>

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